田んぼから羽化するアキアカネ
 どうして、何もいない空よりも赤トンボが群れ飛んでいる風景の方が気持ちいいのでしょうか。どうして、静かな夜よりも、カエルの鳴き声が天空に充ちる夏の夜の方が安心するのでしょうか。どうしてアスファルトの道よりも、野の花が咲き乱れる畦道の方が心が広がるのでしょうか。
  ずっと昔から流れてきた時間の中で、くりかえし、くりかえして来たものが、私たちに伝わって来る何かがあります。それは、赤トンボを育て、カエルを守り、野の花をめでてきたものです。それは「百姓仕事」と呼ばれてきたものです。そうです。百姓仕事は食べものだけでなく、“自然”をも「生産」してきたのです。百姓はそうした“自然”を、自慢することはありませんでした。ただ、その中に浸り、心を溶かして、感じてきただけです。
  その“自然”の中から、赤トンボ(秋アカネと薄羽黄トンボ)を代表に選んで、一つのお願いをすることにしました。私たち現代人に答えてほしいと頼みました。田んぼで生まれているって、ほんとうですか?いつ頃生まれて、どこに飛んでいくのですか?どういう百姓仕事によって、守られているのですか?というような質問に答えてほしいとお願いしたのです。
 きっと、赤トンボたちは答えてくれるはずです。さあ、このガイドブックを持って、田んぼや山やプールにでかけましょう。そして、赤トンボに問いかけてほしいのです。この調査は、この国で稲作が始まって、2400年めににしてはじめて行われる全国調査です。赤トンボに代表されるカネにならない「田んぼのめぐみ」が、どんなにいっぱい生みだされているかを感じて、確かめることが目的です。この国の“自然”を守り、さらに2400年後までも伝えていくためです。そのために、赤トンボを育てる百姓仕事と、それを大切にするみなさんのまなざしが必要です。
  百姓だけでなく、子どもたちも、市民も参加してください。一杯のごはん(稲3株分)を食べることによって、私たちのいのちは、何匹の赤トンボの命につながっているのでしょうか。あなたのまなざしによって、今年の暮れには、全国の赤トンボの数が国民一人あたり何匹になるのか、ごはん一杯あたり何匹になるかが、発表できたらいいな、と思っています。
  この試みは、農と自然の研究所、むさしの里山研究会、(株)農村環境整備センターという三つの団体が全国に呼びかけて、実施します。ぜひこの輪を広げるのに手を貸してください。


<< Top [ 全国「赤とんぼ」調査]  | Back | Next |